星々の悲しみ | 「本を食べる!?」

星々の悲しみ

宮本 輝
星々の悲しみ

大学受験のために予備校に通う少年。いつの間にか、予備校に通うことよりも図書館にいくことが多くなる。ついには126篇もの小説を読破してしまう。図書館でみかけた大学生のお姉さんに恋心を抱いたのがきっかけて通うようになったのだが。

おかしな二人組みに出会い、共に青春を分かち合っていく。少年の妹に恋をする草間とハーフのような綺麗な顔だちの有吉。

喫茶店「じゃこう」で盗みだした絵画「星々の悲しみ」。

少年たちの青春を巧みに描いた短編小説。


この作品にはタイトルの「星々の悲しみ」以外にも、いくつかの短編が収録されている。


時代はまだ結核が大病だった時を背景としている。


物語の締めくくりが、ハッピーエンドで終わるのではなくて、読み手にとっては消化不良のような締めくくりがおおくあった。


ただそれは、筆者が時代に投げかけている疑問符のような気がしてならない。


病気が治るだとか、青春の恋が成就するだとか、そんなことが目的でもなければ描いている作品でもない。


物語は終わっても人生は続いていく


小説が与えるものは単純に幸福に満ちた感動だけではなく、人生そのものになげかける「なにか」を感じさせてくれた気がする。


宮本さんの描くストーリーには、そんな深みを感じずにはいられない。


筆者が意図するところはまた別にあるのかもしれないが、僕が小説から読み取れたものが筆者が意図しない未知の部分を描けていたら、それはそれで良い作品だったということだろう。