ヤザキケン=村上龍? | 「本を食べる!?」

ヤザキケン=村上龍?

村上 龍
はじめての夜 二度目の夜 最後の夜

小説家ヤザキは、二十年ぶりに初恋の人に会う。アオキミチコ、かつて恋したその人も四十を過ぎていた。経過した時間とは無関係なのか、二人は「はじめての夜」を過ごす。エリタージュで食べる豪華な食事の数々、思い出される過去。どれもが懐かしくて、出される料理のように味わいぶかいものだった。

映画にもなって話題になった村上氏の代表作69。その作品にも登場してくるのがヤザキケンという人物だ。69は、村上氏の過去の話を題材に、小説化したもののようだが、今回登場してくるヤザキケンも内容からするに、ほぼ同一人物と考えてよさそうだ。若干の違いはあるだろうけれど(そこはあくまで小説だし)。
20年後のヤザキケンの姿が描かれている。しかも初恋の人からの電話からはじまる再会の物語。

料理の描写がものすごく細かかったのが印象的だ。それぞれの項目のタイトルも料理の名前になっている。

フレッシュフォアグラのソテーと大根の甘煮
キノコ類の軽いクリームスープ エリタージュ風
多久牛のポワレ 粒マスタード入りの香草風味

などなど、よだれが今にもたれてしまいそうな程の料理の数々。名前だけでお腹いっぱいになってしまうのではないか。そんなことはないか。。。。

項目のページには、料理のタイトルとその説明も書かれているからわかりやすい。料理の雰囲気だけでなく、本当に順を追ってコースを楽しんでいるような気分になってしまうのだ。その分お腹もすいてしまうのが欠点だが。

勘違いしないで欲しいのは、この小説は料理本ではないことだ。

初恋の人との二十年ぶりの再会がもたらすものはなんなのか、、、
お互いに家庭があるにもかかわらずに迎える「初めての夜」とは、、、

矛盾に頭が支配されそうになりながらも、その瞬間を永遠のように感じることが大切だとヤザキは思っていた。

不倫といってしまえば、それでおしまいなのだが。きっとそれだけではない、お互いの中にしかわからない綺麗なものがあるのだろうと、そんな予感めいたものを感じさせられる。

村上氏の著書69を読んでから、この作品に目を通すのもおもしろいだろう。